公務員獣医師の仕事内容を徹底解説!動物・人間・環境を守る重要な役割

  • 2024年7月5日
  • 農業
  • 106回

獣医学生の就職先候補として人気が高い公務員獣医師。
令和4年の農林水産省の調査によると、獣医師の約4人に1人が公務員獣医師として働いている状況です。
(参考:農林水産省「獣医師の届出状況(獣医師数)」)

一口に公務員獣医師といっても、その仕事内容は多岐に渡ります。
動物・人間・環境を守る役割を担っており、活躍の場は数え切れません。

本記事では、公務員獣医師の種類や仕事内容、具体的な勤務先まで紹介します。
公務員獣医師を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

公務員獣医師の種類

公務員獣医師の種類

公務員獣医師は、仕事内容によって以下の2種類に分られます。

  • 家畜衛生獣医師
  • 公衆衛生獣医師

それぞれの役割を解説します。

家畜衛生獣医師

家畜衛生獣医師とは、主に家畜の健康管理や伝染病予防を行う獣医師です。
家畜の健康診断や治療、ワクチン接種などを実施し、家畜伝染病の予防や早期発見に努めます。

家畜伝染病の発生時には、迅速な調査を行い、感染拡大防止策を講じます。
また、畜産農家に対して飼育環境の管理指導や、飼料の安全性監視なども行います。

家畜の福祉や畜産業の安定を支える仕事です。

公衆衛生獣医師

公衆衛生獣医師とは、主に食品の安全性確保や動物愛護の普及啓発を行う獣医師です。
食肉検査を通じて食品の安全性を確保して、動物由来感染症の防止に努めます。
各地域の疾病発生状況の監視や、人への感染防止対策を行うのも重要な役割です。

また、動物愛護や環境衛生の観点から、適切な飼育環境や廃棄物処理の指導も行います。
人と動物が共生できる社会をつくるために、欠かせない仕事です。

公務員獣医師の仕事内容

公務員獣医師の仕事内容

公務員獣医師の仕事内容は、以下の5つに分られます。

  • 家畜伝染病のまん延防止
  • 食肉検査
  • 動物愛護管理
  • 環境衛生管理
  • 教育と啓発活動

それぞれの仕事内容について、詳しく解説します。

家畜伝染病のまん延防止

公務員獣医師の重要な役割の1つが、「家畜伝染病の防除」です。

家畜伝染病の発生が確認されると、直ちに現場に赴き、感染経路を特定するために詳細な調査を行います。
具体的には、感染源の特定、感染拡大具合の確認、感染経路の追跡などを行い、まずは現状を把握します。

現場での調査が完了したら、続いて感染拡大を防ぐためのステップです。
感染動物の隔離や処分、移動制限のほか、汚染区域の消毒などを行います。

発生地域の農家や関係者に対して、家畜伝染病の拡大を防ぐための具体的な指示やアドバイスを提供するのも、公務員獣医師の役割です。

家畜伝染病の予防対策

家畜伝染病の被害を最小限に抑えるためには、予防対策が重要です。
公務員獣医師は、家畜伝染病の予防対策として、家畜へのワクチン接種プログラムを実施し、感染リスクを低減させます。

また、定期的な検査を行い、早期発見・早期対応に努めるのも重要な役割です。
万が一、家畜伝染病が発生した場合にも、その被害が最小限に抑えられるような取り組みをしています。

食肉検査

公務員獣医師が行う「食肉検査」は、食の安全性確保に直結する重要な業務です。

と畜場に到着した動物の健康状態を確認するために、生体検査を実施します。
生体検査では、病気や異常がないかを目視や触診で確認し、疑わしい場合はさらに詳しい検査を行います。

と畜後は、内臓や肉の状態を確認する屠体検査を行います。
屠体検査とは、内部臓器や筋肉組織に病変や異常がないかをチェックし、病気の兆候があればその部位を除去する検査です。

屠体検査の種類と概要
屠体検査の種類 概要
視覚検査 屠体の外観を目視で確認し、異常や病変がないかをチェックする。外見的な変色や腫れ、異常な形状などを発見するための検査。
触診 屠体や内臓を手で触って触感を確かめる検査。内臓の硬さや異常な感触を確認する。
解剖検査 屠体や内臓を切開して内部の状態を調べる検査。内部に隠れた病変や寄生虫の有無を確認するための検査。
病理検査 組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる。特定の病気や感染症の有無を確認するために行われる。
残留物質検査 食肉に残留する可能性のある抗生物質やホルモン剤などの化学物質を検査する。基準を超える残留物質がないことを確認する。

また、衛生管理の観点から、と畜場の作業環境や器具の清潔さを定期的に点検し、適切な衛生管理が行われているかを確認するのも役割の1つです。

さらに、抗生物質や化学物質の残留検査も行い、基準値を超える物質が含まれていないことを確認します。

食肉検査は、消費者の健康を守るために欠かせないプロセスであり、安全で高品質な食肉の供給を支える重要な役割を果たしています。

動物愛護管理

動物愛護管理とは、動物の福祉と権利を守るための重要な業務です。

公務員獣医師は、ペットや家畜の飼い主に対して、動物の適正飼育に関する指導を行います。
適切な飼育環境や健康管理方法、栄養供給、運動の必要性などについてのアドバイスを提供します。

また、迷子動物の保護業務も、公務員獣医師の仕事です。
保護された動物が適切なケアを受け、新しい飼い主を見つけるまでの間、安全な環境で過ごせるように管理します。

動物虐待の防止においては、虐待の疑いがある場合には調査を行い、必要に応じて法的措置を講じます。

公務員獣医師は、これらの活動を通じて、動物と人間が共生する社会を目指し、動物の健康と幸福を守るために尽力しています。

環境衛生管理

環境衛生を保つことも、公務員獣医師の重要な役割の1つです。
公務員獣医師は、動物由来の環境汚染を防止したり、廃棄物の適切な処理を管理したりしています。

畜産業や動物飼育施設においては、動物の排泄物や飼育環境から発生する汚染物質の管理が重要です。
適切な排泄物処理システムの導入や、汚染物質が環境中に漏出しないようにするための対策が含まれます。
具体例としては、堆肥化施設の管理やバイオガスプラントの利用などがあげられます。

また、動物の死体処理業務も環境衛生の重要な仕事の1つです。
適切な焼却・埋却方法を指導し、病原菌の拡散を防ぎます。
さらに、動物飼育施設の衛生状態を定期的に点検し、清掃や消毒が適切に行われていることを確認します。

水質汚染防止も公務員獣医師の役割の1つです。
飼育場からの排水が河川や地下水を汚染しないようにするための監視や指導を行います。
また、飼育場周辺の害虫や害獣の防除も含まれます。
適切な殺虫剤の使用や、駆除方法の指導を行い、地域の環境保全に貢献しています。

教育と啓発活動

動物の健康管理や衛生に関する知識を広める活動も、公務員獣医師の仕事です。
畜産農家に対しては、家畜の適切な飼育方法や病気の予防策についての講習会やセミナーを実施します。
農家が最新の獣医学的知識を得ることで、より健康で生産性の高い飼養管理を実現することをサポートします。

一般市民に対しては、動物の健康と福祉に関する意識を高めるための啓発活動を行います。
学校や地域コミュニティでの講演やイベントを通じて、動物愛護の重要性やペットの飼育方法についての正しい知識を普及させます。
パンフレットやインターネットを活用した情報提供を行い、人と動物の共生を目的とした情報発信を行います。

公務員獣医師の勤務先

公務員獣医師の勤務先

公務員獣医師の勤務先は、主に以下の4つです。

  • 家畜保健衛生所
  • 保健所
  • 食肉衛生検査所
  • 保健環境部環境生活課

それぞれどういう施設なのか、簡単に解説します。

家畜保健衛生所

家畜保健衛生所とは、家畜の健康管理と衛生管理を専門とする公的機関です。
この施設では、家畜伝染病の予防・診断・治療を行い、病気の早期発見と拡散防止を目的とした業務が行われています。

家畜保健衛生所に勤務する獣医師は、家畜の健康診断やワクチン接種を実施し、適切な飼育指導を行うことで、畜産農家をサポートします。
地域の畜産業を支え、公共の健康と安全を守る重要な役割を果たしている施設といえるでしょう。

保健所

保健所とは、地域の公衆衛生を支える公的機関です。
感染症の予防と対策、健康診断や検査、栄養指導、母子保健、精神保健、生活習慣病予防など、幅広い健康管理を担当しています。

保健所に勤める獣医師の仕事内容は、動物由来感染症の監視と予防、動物愛護管理です。
動物の健康診断やワクチン接種、動物虐待の防止と適切な飼育指導などを行うことで、地域住民の健康管理や動物愛護において重要な役割を果たしています。

食肉衛生検査所

食肉衛生検査所とは、食肉の安全性を確保するために設置された公的機関です。
食肉処理場で屠殺された動物の健康状態や衛生状態を検査しています。

食肉衛生検査所の獣医師は、屠体検査や内臓検査を行い、病気や異常がないかを確認します。
また、食肉中の残留物質の検査を実施し、基準を超える化学物質や薬物が含まれていないことも確認します。

消費者に安全で健康な食肉を提供し、食中毒や動物由来の感染症のリスクを低減する役割を果たしています。

保健環境部環境生活課

保健環境部環境生活課とは、地域の環境保全と生活環境の改善を担当する公的機関の一部門です。
主な仕事内容としては、環境汚染の監視と防止、廃棄物の適正処理、リサイクル推進、生活環境の美化、騒音や悪臭対策などが含まれます。

また、住民への環境教育や啓発活動も行い、環境保護の意識を高める役割も担っています。
地域の健康と快適な生活環境を維持するために、さまざまな環境問題に対応し、持続可能な地域社会の実現を目指しています。

公務員獣医師になるには

公務員獣医師になるには

公務員獣医師になるには、以下の試験に合格しなければなりません。

  • 獣医師国家試験
  • 公務員試験

大学卒業後に獣医師として働くためには、獣医師国家試験に合格しなければなりません。
獣医学に関する幅広い知識を身につけた人だけが、獣医師としての資格を与えられます。

国家公務員獣医師を目指す場合は、公務員試験にも合格しなければなりません。
試験日は年度により異なり、申し込み期日が早めに設定されているため、国家公務員獣医師を志望する方は事前に確認しておきましょう。
獣医師職に特化した採用枠は限られており、狭き門となっています。

地方公務員獣医師の採用方法は、自治体により異なります。
一般的には、筆記試験や小論文、面接などを通じて選考が行われます。
採用年齢や募集人数も自治体により異なるので、希望する自治体のホームページで確認しておきましょう。

公務員獣医師の仕事内容まとめ

公務員獣医師の仕事内容まとめ

公務員獣医師は、家畜衛生と公衆衛生の大きく2種類に分類され、それぞれ仕事内容が異なります。
家畜伝染病のまん延防止や食肉検査、動物愛護管理、環境衛生管理など、公務員獣医師の仕事内容は多岐に渡ります。

公務員獣医師になるには、獣医師国家試験と公務員試験に合格しなければなりません。
地方公務員獣医師の採用方法は自治体により異なるため、受験前に必ず確認しておきましょう。