短時間で栄養バランスのよい食事が摂れる完全栄養食。日本国内の市場規模も拡大しつつあり、新たに参入しようとしている人も多いのではないでしょうか。
完全栄養食市場は世界的な注目を集めているだけに、新規参入するためには徹底した市場分析が欠かせません。
今回は、日本国内の完全栄養食市場の動向や、市場規模が拡大した理由、代表的な成長企業について解説します。「完全栄養食が注目される理由が気になる」「新たな市場でビジネスしたい」という人は、ぜひ最後までご覧ください。
完全栄養食の市場規模
完全栄養食とは「1日に必要な栄養素のうち3分の1以上を摂取できる食品」と定義されるのが一般的です。あるいは、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に基づき、必要な栄養素を過不足なく取れる食品を完全栄養食と定義する場合もあります。
(参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」)
国内の完全栄養食市場は2016年頃に立ち上がり、現在に至るまで徐々に拡大しています。
当時はベンチャー企業の参入が多かったものの、2019年以降は大手企業も続々と参入し、消費者の認知度も高まってきました。
2022年の国内市場規模は144億円
株式会社富士経済の調査データによると、2022年の完全栄養食の国内市場は144億円まで増加すると見込まれています。2021年と比較すると、その差は2.3倍。市場規模が急速に拡大していることがわかります。
(出典:株式会社 富士経済「完全栄養食の国内市場は546億円(2030 年予測)」)
しかし、アイブリッジ株式会社のアンケート調査によると、完全栄養食を利用しているユーザーは8.7%と、まだまだ伸びしろがある数字です。
(Freeasy(フリージー)調べ:https://freeasy24.research-plus.net/)
2030年は546億円になる見込み
日本国内における完全栄養食の市場は、2030年に546億円に達するといわれています。2019年には日清食品、2021年には森永製菓と、日本を代表する大手企業の参入により、今後も市場規模は拡大しつづけると予想されます。
LINEリサーチによると、2022年9月における完全栄養食の認知率は54%という結果でした。利用意向がある人は全体の45%を占めており、すでに多くの人々が興味関心を抱いていることがわかります。
(出典:LINEリサーチ「流行体感から読み解くサービス未来予測 流行予想シリーズ ~完全栄養食(完全食)編~」)
完全栄養食の市場規模が拡大した理由とは
完全栄養食の市場が拡大している理由は次のとおりです。
- 健康志向の人が増えた
- 手軽に買えるようになった
- 商品のレパートリーが増えた
順番に解説します。
健康志向の人が増えた
健康志向の高まりは、完全栄養食の市場規模拡大を後押ししています。
きっかけとなったのは2020年頃から始まった外出自粛。家で過ごす時間が長くなり、食事・運動・睡眠といった生活に関わる行動が見直されました。
1日に必要な栄養素を補える完全栄養食は、自粛期間中に注目を集めた分野です。調理の手間も省けて、栄養バランスのよい食事を摂取できるのが人気を集めている理由でしょう。
手軽に買えるようになった
完全栄養食は、スーパーやコンビニでも購入可能です。
発売当初はECサイトを中心とした販売ルートしかなく、利用者も限定的でした。しかし現在は近所のコンビニでも気軽に買えるようになり、身近な存在となっています。
SNSでも話題になり、人々の認知度が高まったことで、完全栄養食を手にとる人が増えました。
商品のレパートリーが増えた
完全栄養食には3つのタイプが存在します。
タイプ | 具体例 |
---|---|
ごはん系 | パスタ、パン、味噌汁など |
ドリンク系 | スムージー、パウダーなど |
おやつ系 | グミ、クッキーなど |
レパートリーが増えただけでなく、味や食感の進化も市場規模拡大の要因です。
発売当初はボソボソとした食感で消費者に受け入れられなかった商品も、改良が重ねられて普段の食事と変わらないおいしさに近づきつつあります。
市場に参入する企業が増えて競争が生まれたことで、ハイクオリティな新商品も次々に誕生しています。
完全栄養食の市場でシェア拡大に成功した企業
完全栄養食の市場でシェア拡大に成功した3つの企業を紹介します。
企業名 | 代表商品 |
---|---|
ベースフード株式会社 | BASE FOOD |
日清食品グループ | 完全メシ |
株式会社COMP | COMP Gummy TB v.3.0 |
市場規模の拡大にともない、企業ごとの個性を活かしたファンビジネスも注目すべきポイントです。それぞれの企業の特徴を紹介します。
ベースフード株式会社「BASE FOOD」
- 日本のフードテック産業を牽引するスタートアップ企業
- 26種類の栄養素を含んだ完全栄養食「BASE FOOD」
- 主食のイノベーションに注力
ベースフード株式会社は、日本を代表する完全栄養食のスタートアップ企業です。パン・パスタ・クッキーなど、日常で手軽に栄養素を補える「BASE FOOD」を販売しています。
コンビニやスーパーでも気軽に買えるほか、10万人以上の登録者を誇るサブスクリプションサービスも提供しています。健康管理はもちろんのこと、ダイエット目的で利用する人も少なくありません。
(公式サイト:https://basefood.co.jp/)
日清食品グループ「完全メシ」
- 栄養素とおいしさの完全なバランスを追求
- 20種類の商品ラインナップ(2023年7月11日時点)
- インスタントラーメンで培った独自技術を応用
代表作の「カレーメシ」をはじめとして、豊富な商品ラインナップを展開する日清食品。三大栄養素はもちろん、ビタミン・ミネラルなど33種類の栄養素を含んだ完全栄養食を提供しています。
30〜40代の「健康は気になるけど、栄養バランスを自分で考えるのは面倒くさい」という人々に向けた商品開発をおこなっています。栄養バランスだけでなく、普段の食事と変わらぬおいしさで注目される企業です。
(公式サイト:https://www.nissinkanzenmeshi.com/)
株式会社COMP「COMP Gummy TB v.3.0」
- 「日本人の食事摂取基準」をもとに設計
- 目的に合わせた栄養モデルを選べる
- 気軽に続けられる工夫が人気の理由
パウダータイプの完全食を主力商品とするCOMP。トータルバランスドモデル・糖質調整モデル・コンセプトモデルなど、目的に合わせて栄養素の配合量を微調整しているのが特徴です。
定番のパウダータイプ以外にも、「COMP Gummy TB v.3.0」というグミもおすすめです。おやつ感覚で食べられるうえに、完全栄養食のデメリットである「咀嚼回数の減少」を改善できます。
(公式サイト:https://www.comp.jp/)
まとめ:完全栄養食の市場規模は今後も拡大する見込み
完全栄養食の市場規模は、2030年には546億円に達すると見込まれています。中小企業だけでなく、資本力のある大手企業の参入が増えてきたこともあり、今後は「いかにしてオリジナリティを発揮できるか」が勝敗の分かれ目となるでしょう。
完全栄養食の市場に参入する際は、徹底した市場分析、自社の強みの明確化が必要です。商品開発から販売戦略まで一貫したマーケティング戦略を立てましょう。