発酵と腐敗の違いは?仕組みや体に与える影響をわかりやすく解説

プロセスは似ていても、体への影響が異なる発酵と腐敗。同じような変化をたどっているのに、なぜ発酵と腐敗は違う現象として捉えられているのでしょうか。

「なぜ発酵は体に良いのに、腐敗はダメなのか」「発酵と腐敗の違いはどこにあるのか」と、疑問に思っている人も多いはず。

本記事では、発酵と腐敗の違いをわかりやすく解説します。発酵や腐敗を促す微生物、体に与える影響について知りたい人は、ぜひ最後までご覧ください。

発酵とは?

発酵とは

発酵とは、微生物によって有機物が分解され、さまざまな副産物が作り出される過程で、人間にとって有益な物質が作られることです。

発酵食品は世界中に流通しており、日本国内にも多くの発酵食品が存在しています。発酵食品が豊富な和食は、ユネスコ無形文化財に登録され、健康食としても注目されています。

日本は温暖で湿度が高く、発酵を促進しやすい気候条件の国です。古くから発酵という技術に馴染みがあり、発酵食品の種類も豊富です。

先人たちは、発酵食品の製造に役立つ微生物を選抜・育種してきました。より良い菌を活用することで、発酵技術を発展させたのです。

発酵と腐敗の違い

発酵と腐敗の違いは「人間の体に有益かどうか」という点にあります。発酵は有益なもの、腐敗は有害なものです。

食品を発酵させると、うま味や栄養素が増したり、体の機能を高めたり、摂取するとプラスの影響があります。

一方、腐敗したものを食べると下痢や腹痛が発生し、体にマイナスの影響を与えます。

発酵か腐敗かの判断は個人の主観による部分も大きく、国や地域の文化によって受け取り方はさまざまです。

例えば、納豆は多くの日本人に好まれますが、外国人は臭いやネバネバした食感を嫌がります。逆に、外国人が好きな発酵食品が、日本人には受け入れられない場合も少なくありません。

発酵と熟成の違い

熟成とは、食品の発酵後に温度と湿度を管理した状態で寝かすことで、風味や品質が向上する現象です。食品自体が保有する酵素によって、アミノ酸などのうま味成分が増加します。

熟成は「微生物が介在しない食品の変化」を指す場合がほとんどです。

例えば、味噌は麹菌による発酵が起こった後で、麹菌が産生した酵素によって熟成が進む食品です。微生物の働きにより新たな成分が生み出されているため、発酵に分類されます。

一方、熟成肉は食品自体の酵素が特定の条件下で肉の成分を分解する現象で、微生物の介在がありません。微生物がいなくても、食品自体が持つ酵素で反応が進むため、熟成に分類されます。

発酵食品は腐るのか?

発酵食品は腐るのか

発酵食品は、発酵を促す微生物にとって好ましい環境下では、腐りにくいとされています。発酵食品が腐りにくいのは、発酵菌が他の菌の増殖を抑制しているためです。

しかし、甘酒のように糖分が多い発酵食品は、塩分が多いものと比較すると腐りやすい傾向にあります。これは腐敗を促進する微生物が糖を利用して増殖するためです。

発酵食品は腐りにくいとはいえ、永遠に保存できるわけではありません。腐る前に、賞味期限を守って食べましょう。

腐敗や食中毒を起こす微生物

微生物の中には、腐敗を促進するもの、食中毒の原因になるものがいます。

腐敗の原因となる微生物と、食品の変化は以下の通りです。

微生物 食品の変化 主な食品
微生物全般 食品自体に不自然な着色が見られる パン
お惣菜
ハム
ソーセージ
乳酸菌 甘い臭い・アルコール臭・不快臭など 食品全般
乳酸菌
バチルス菌
食品から粘り物質が発生する かまぼこ
加工肉
バチルス菌 微生物が食品の組織を分解し軟化させる かまぼこ
加工肉
酵母 酵母が二酸化炭素を排出し、食べ物が膨張する 洋菓子
漬物
カビ カビが増殖し、わたのような塊が目視できる パン

炊いた米

野菜

食中毒を起こす微生物についても理解しておきましょう。

食中毒は、菌そのものを摂取して発症する「感染型」と、微生物が産生する毒素が原因で発症する「毒素型」に分類されます。

感染型の食中毒菌 特徴 主な食品
腸炎ビブリオ 海水中に生息し、真水では増殖できない 魚介類
カンピロバクター 家畜やペットに広く分布し、大気中では増殖できない 鶏肉
サルモネラ菌 主に動物の消化管内に生息

加工食品
毒素型の食中毒菌 特徴 主な食品
黄色ブドウ球菌 人や動物の皮膚・粘膜などに付着 おにぎり
弁当
調理パン
ボツリヌス菌 土壌中に多く存在し、熱に強い 缶詰
いずし
セレウス菌 土壌や空気中に存在し、熱に強い

野菜

腐敗した食品は臭いや見た目で判断できますが、食中毒を引き起こす食べ物は、気づきにくい場合が多いです。

発酵を促す微生物

発酵は細菌・酵母・カビにより促進されます。

微生物 特徴
細菌 納豆やヨーグルトを作るときに使われる
酵母 パンやビールを作るときに使われる
カビ チーズや味噌を作るときに使われる

発酵食品と腐敗食品の体への影響の違い

発酵食品と腐敗食品の違い

発酵食品は体に良い影響を与えますが、腐敗食品は食べると不調につながる恐れがあります。

発酵食品と腐敗食品の影響を理解しておきましょう。

発酵食品の効果

発酵食品には次のような効果があります。

  • 腸内環境の改善
  • アレルギー反応の軽減
  • 消化・吸収作用の促進

発酵を促す微生物は、悪玉菌の増殖を抑制しつつ、善玉菌の成長を促して腸内環境を整えます

腸内細菌は免疫系においても重要です。腸内細菌のバランスが整うことで免疫細胞が活性し、体内の炎症反応が抑えられたというデータもあります。

また、発酵プロセスで生じた酵素は、消化管の運動を活性化させて、食べ物の消化・吸収を促進する効果があります。

腐敗食品の影響

腐敗食品には、食中毒を起こすリスクがあるため、摂取しないように気をつけましょう。腐敗食品を摂取すると、吐き気・嘔吐・腹痛などの消化器症状につながります。

腐敗した食品は、着色・悪臭・粘り気など見た目の変化を起こす場合も多いので、よく観察してから食べることが大切です。

まとめ:発酵と腐敗の違いは人にとって有益か無益か

発酵と腐敗の違いまとめ

発酵と腐敗の違いは、人間にとって有益な物質が作られるか否かという点にあります。いずれも微生物による食品の変化である点は同じですが、人間の体に与える影響が違います。

発酵食品には、腸内環境を改善したり、消化・吸収を促進したりする効果があるので、積極的に食べるのがおすすめです。発酵食品と腐敗食品の違いを理解して、体にやさしい食生活を心がけましょう。