成牛の1日あたりのエサの量|乾物摂取量とは?飼養管理のポイントも!

  • 2023年4月21日
  • 農業
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牛のエサを管理するときは、乾物摂取量という指標が使われます。牛のエサとなる牧草には多くの水分が含まれており、同じ重さでも種類が違うと、牛が摂取できる栄養素にバラツキが出てしまうためです。単純なエサの重さで管理すると、牛は必要な栄養素を十分に摂取することができず、体調不良に陥ります。

そこで今回は、乾物摂取量をもとにしたエサの量の計算方法や、乳用牛・肉用牛のそれぞれで大切な飼養管理のポイントについて紹介します。難しそうに聞こえるかもしれませんが、一度理解してしまえば簡単に計算できるようになるはずですよ。

成牛の1日あたりのエサの量

成牛の1日あたりのエサの量

成牛の1日あたりのエサの量は、乾物重量で体重の約3.5%だといわれています。

注意しなければならないのは、単純に「牛が食べたエサの量」を測るのではなく、「乾物摂取量」で考えなければならないという点です。

乾物摂取量とは?

乾物摂取量とは、「牛が食べたエサの量」から「食べられたエサに含まれていた水分量」を差し引いた値です。

配合飼料・乾草・サイレージなど、牛のエサには必ず水分が含まれています。水分を含んだままの重さを「現物重量」といい、水分を含まない重さを「乾物重量」といいます。

牛のエサの量について考えるときは、乾物重量を使って計算しなければなりません。

エサの種類と乾物重量

一口に乾物重量といっても、エサの種類によってその数値はさまざまです。

乾物重量に影響を与える要因として最も重要なのが、飼料の調整方法です。つまり、どのようにして飼料を作っているかによって、含まれる水分量が大きく変わります。

●「乾草」の水分量は約12〜15%

乾燥は、牧草を乾燥させることで作られます。

生育中の牧草は約65〜85%の水分を含んでいますが、これを刈り取って空気にさらして乾燥させることで、大気中とほぼ等しい12〜15%の水分含量になるわけです。

水分含量を減らすことで長期間の保存が可能となるだけでなく、飼料中のビタミン・ミネラルの成分比率が高まるというメリットもあります。

●「サイレージ」の水分量は約75%

サイレージとは、乳酸発酵をはじめとする嫌気的発酵により貯蔵性を高めたエサのことです。

乳酸や酢酸といった有機酸が増えることでpHが低くなり、腐敗の原因となるカビや細菌の増殖を抑制します。

有機酸の中でも特に乳酸の割合が高く、pH4.5以下で水分含量75%前後に調整されたものが良質なサイレージだといわれています。

成牛は体重の3.5%の乾物を採食できる

乾物摂取量は、育成牛で体重の2.5〜3.0%、成牛で体重の3.5%程度だといわれています。もちろん牛の年齢・乳量・健康状態などにより差はあるものの、基本的にはこれくらいの量を目安に飼料を設計していくことが大事です。

(例)体重700kgの成牛の場合
   700 × 3.5% = 24.5kg

体重700kgの成牛は、1日あたり24.5kgの乾物を採食できるということになります。

牛の体重から採食可能な乾物摂取量を計算し、泌乳ステージや発育ステージによってエサの量を微調整していくというのが一般的な飼養管理方法です。

乳用牛のエサの管理では緻密なプログラム設計が重要

乳用牛のエサの管理では緻密なプログラム設計が重要

乳用牛のエサの管理では、泌乳ステージに合わせた飼料給与プログラムを設計することが重要です。

飼料給与プログラムの設計では、牛の体重・産乳量・乳成分・妊娠の有無・環境温度・エサの種類・割合・給与順序・給与頻度など多くの因子について考えなければなりません。

個人で行うのは無理があるため、飼料会社などにお願いして設計してもらいましょう。

肉用牛のエサの管理ではビタミンコントロールが重要

肉用牛のエサの管理ではビタミンコントロールが重要

肉用牛のエサの管理では、肥育期におけるビタミンコントロールが重要です。肥育方法については、それぞれの農場の目的によってさまざまであるため一般化することはできませんが、ざっくりとした流れは以下のようになります。

  1. 予備期:粗飼料メインの飼料給与で第一胃の状態を整える
  2. 肥育前期:骨格・筋肉・胃を作る
  3. 肥育中期:肥育を本格化して体重を増やしつつ、ビタミンAを制限することで脂肪交雑を高める
  4. 肥育後期:脂肪交雑を確実にしていく
  5. 仕上期:肉質を整える

それぞれの段階ごとに粗飼料・濃厚飼料・添加物の配合割合を変えることで、目的とする肉質へと近づけていくわけです。

特に肥育中期から後期にかけてのビタミンAの制限が重要で、血中ビタミンA濃度を欠乏値ギリギリの30IU/dLまで制限することで、いわゆる「サシ」が入ります。この時期に過度な制限をしてビタミンA欠乏症になると、食欲不振・尿石症・夜盲症(失明)・筋間水腫(ズル)などが発生してしまいます。

牛の健康を維持しつつ肉質を高めていくためには、予備期や肥育前期の飼養管理にも気をつけなければなりません。

まとめ

成牛は1日あたり3.5%の乾物を採食できます。エサの量を考えるときは、乾物重量にもとづいて計算することがポイントです。

乾草やサイレージなど、飼料の調整方法によって含有水分量が大きく変わることも覚えておきましょう。現物重量にもとづいた飼養管理をすると、牛の成育に必要な栄養素が不足してしまいます。

泌乳ステージごとの給与プログラムや、肥育牛のビタミンコントロールなど、牛のエサの管理は非常に奥が深いです。今回紹介した内容を踏まえた上で飼料設計を見直してみると、新たな発見があるかもしれませんよ。