『食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本』を読みました。
書籍の要約ポイント、読んだ感想について紹介します。
『食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本』の簡単な紹介
●著者について
著者の井出 留美(いで るみ)さんは、食品ロス問題の解決に向けて国際的な活動を続けている「食品ロス問題ジャーナリスト」です。株式会社office3.11の代表取締役を務めており、食品ロスに対する問題意識を全国的に広めた功績を讃えられ、「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018」「令和2年度 食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞」を受賞するなど、華々しい実績を残されています。
●書籍のポイント
- 食料危機は悪化の一途をたどっている
- 食料危機の背景にはさまざまな問題が隠れている
- 私たちにも今日からできることがある
食料危機問題を解決するためには、膨大な時間と労力が必要です。たった1人が頑張ったところで、世界は何も変わりません。
だからこそ、1人でも多くの人にこの本を読んでほしいと思いました。「え、このままだと自分たちの食べるものなくなるじゃん…」と、深刻なまでの当事者意識を持てるはず。
特に「食」に関わる仕事をしている人は、なるべく若いうちに読んでおくべき一冊だと思います。
『食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本』の要約ポイント
5歳未満の子どもの死亡原因の45%は、栄養不良に関連しています。
(引用:食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本 22ページ)
一口に栄養不良といっても、栄養不足(栄養が足りず発育に支障が出る状態)や微量栄養素不足(「隠れた飢餓」ともいわれる状態)など、いくつかの種類があります。このような栄養不良が原因でなくなる子どもを減らすためには、食料危機問題の解決に向けた取り組みが欠かせません。
ユニセフの調査によると、2021年には約6秒に1人のペースで5歳未満の子どもが亡くなっています。子どもの栄養不良は日本でも散見されており、他人ごとではありません。
(出典:日本ユニセフ協会「ユニセフの主な活動分野|保健」)
2050年、世界の3人に1人がベジタリアンになる?
(引用:食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本 26ページ)
世界的な人口増加に伴い、肉の消費量が増えています。「それならもっとたくさん生産すればいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、肉を生産するためには莫大な量の穀物と水が必要です。ただでさえ多くの人が飢餓で苦しんでいるというのに、はたしてそれは現実的な選択といえるでしょうか?
世界的に肉の需要が増加すると、必然的に肉の値段も高くなります。経済の低迷が続く日本では、肉は富裕層しか食べられない超高級品になるかもしれません。
食品ロスは世界の温室効果ガスの8.2%を占めています。
(引用:食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本 44ページ)
地球温暖化と聞くと、「車の排気ガス」「電気の無駄遣い」といった日常的になじみのある部分にばかり注目しがちです。しかし温室効果ガスに占める割合を比較してみると、「食品ロスが8.2%」「車が10.0%」と、ほとんど同じくらいの悪影響をおよぼしていることが分かります。
ちなみに飛行機が温室効果ガスに占める割合は1.4%。食品ロスは、飛行機の約6倍もの悪影響をおよぼしているわけです。
牛肉1キロを生産するために、11キロの穀物が必要です。
(引用:食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本 56ページ)
私たちが食べている肉を生産するためには、多くの穀物と水が必要になります。牛肉1キロには11キロ、豚肉1キロには6キロ、鶏肉1キロには4キロ、卵1キロには2キロの穀物が必要だといわれています。これらの穀物を育てるためには、大量の水も必要です。たった1キロの牛肉を生産するためには、なんと2万リットルもの水が必要だそうです。
世界には、綺麗な水を飲めない人が22億人もいます。肉を食べるなと言いたいわけではありませんが、飢餓で苦しむ人々の食料になったかもしれない穀物を消費して、おいしい肉が食べられているという認識は持つべきかなと思います。
『食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本』を読んで感じたこと
『食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本』は、食料危機問題の入門書として最適な1冊だと感じました。食品ロス問題の専門家である著者の丁寧な語り口と、豊富なイラストのおかげで直感的にも理解しやすい内容でした。
「食」に関わる仕事をしている人や、環境問題に関心がある人は、一度手に取って読んでみてください。特に10代から30代にかけての「これからを担う世代」の人は、なるべく若いうちに読んでおくことをおすすめします。