「農家さんの1日」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか。「毎朝早起きしている」「昼は何をしているんだろう?」こんなふうに思う人も多いはず。農家さんの働き方についてなんとなくイメージできる人は多いものの、具体的な1日の過ごし方まで理解している人はほとんどいないのが現状です。
そこで今回は、牛を飼っている農家さんの1日の流れについて、時間を区切りながら紹介します。酪農畜産の現場で働いて良かったこと・大変なこともまとめてみました。牛を育てる仕事に興味がある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
酪農畜産農家さんの1日の流れ
朝起きてから夜寝るまでの、農家さんの1日の過ごし方を紹介します。1日の流れは、季節や農場規模によって異なる場合もありますが、今回は一般的な例をあげます。
■エサやり・哺乳(5:00-7:00)
酪農畜産の仕事をするうえで、早起きは欠かせません。農家さんの1日は、牛のお世話からはじまります。
エサやり・哺乳をしながら、体調が悪い牛がいないかチェックします。
■搾乳(7:00-9:00)
搾乳準備ができたら、朝の搾乳がはじまります。酪農家さんの収入源となる大事な仕事です。
搾乳の前後には「ディッピング」と呼ばれる消毒作業を行います。牛が乳房炎になると牛乳を出荷できなくなるため、徹底した衛生管理が求められます。
■牛舎清掃(9:00-10:00)
朝の締めは、牛舎の掃除です。作業中に体調不良の牛を発見した場合は、獣医師を呼んで診療してもらいます。
これで朝の仕事は終わりです。
■昼休憩(10:00-15:00)
朝の仕事が終わったら、朝食の時間です。家族や従業員と一緒にごはんを食べながら、その日の予定を立てます。朝の作業中に気になる牛がいた場合は健康チェックを行い、必要に応じて獣医師と連絡を取り合います。
農家さんが昼に行う仕事は、主に次の通りです。
- 畑仕事
- 牧草の刈り込み
- 機械の点検や修理
- 飼料の管理
- 除雪
- 事務仕事
- その他の農場管理業務
酪農畜産と耕作を兼業している農家さんも多く、昼のうちに畑仕事をしています。他にも、夏には牧草を刈り込んだり冬には農場の除雪をしたり、昼休憩といってもやることはたくさんあります。家事をしたり食材の買い出しに行ったりするのも、この時間帯が多いです。
■エサやり・哺乳(16:00-18:00)
夕方の仕事スタートです。まずは成牛へのエサやりと、子牛への哺乳から。
エサを与えながら、具合が悪そうな牛がいないかチェックします。
■搾乳(18:00-20:00)
夕方の搾乳を行い、残りの仕事を片付けたら牛舎の仕事は終わりです。
■休息(20:00-翌5:00)
家族や従業員と一緒に夕食を食べて、家でのんびりと過ごします。ゆっくりとお風呂に浸かったり、テレビを見てくつろいだりしながら、翌日の早朝に備えて十分な睡眠をとります。
以上が、一般的な農家さんの1日の流れです。
酪農畜産の仕事をしていて良かったこと
酪農畜産の仕事をするうえで、楽しいことや嬉しいことはたくさんあります。そのなかでも特に重要な「酪農畜産ならでは」のメリットは次の3つです。
- 四季の移り変わりや自然の美しさを感じられる
- 食糧生産を通じて社会に貢献している実感が得られる
- 地域社会とのつながりが深まる
牛を育てるというのは、自然が好きな人や動物が好きな人にとっては、喜びが大きい働き方です。それぞれのメリットについて具体的に説明します。
四季の移り変わりや自然の美しさを感じられる
酪農畜産の仕事では、屋外での作業がメインです。外にいる時間が長いため、四季の移り変わりや自然の美しさを日常的に楽しめるというメリットがあります。
「室内でパソコンをカタカタするよりも、屋外でのびのびと働きたい」という人にぴったりの仕事といえるでしょう。
食糧生産を通じて社会に貢献している実感が得られる
農家さんの仕事は、人々の食生活を支えるために必要不可欠な仕事です。牛乳や牛肉などの食糧生産を通じて、社会貢献を実感できるというのもメリットの1つです。
農場を経営することで、自分の判断で仕事を進めたり、働き方を工夫したりできるのも他にはない特徴といえます。
地域社会とのつながりが深まる
酪農畜産の仕事を通して、地域社会とのつながりが深まるというのも楽しさの1つです。同じ地域の農家さんで集まって、みんなでごはんを食べたりお酒を飲んだり、人と人とのつながりを強く感じられるのも他にはない魅力ですね。
夏には牧場でバーベキューをしたり、冬にはみんな集まって忘年会をしたり、季節ごとのイベントを一緒に楽しめる仲間が増えるというメリットもあります。
酪農畜産の仕事をするうえで大変なこと
酪農畜産の仕事をしていると、ときには「大変だな」と思う瞬間もあります。次の3つは酪農畜産の仕事をするうえで避けては通れないことです。
- 体力が必要な仕事である
- 気候変動や経済状況などの外部要因によって収入が変動する
- 専門知識と技術の習得が求められる
「仕事をするうえで大変なこと」と「その解決法」を知るだけでも、実際に農場に出てから苦労する場面は激減します。思っていたのと違う…とならないように、事前に学んでおきましょう。
体力が必要な仕事である
牛を育てる仕事では、体力が必要になる場面がたくさんあります。早起きして1日がはじまり、ときには夜遅くまで働かなければならない日も少なくありません。牛の健康状態や生産物の衛生管理にも気を配る必要があるため、肉体的にも精神的にも体力をつける必要があります。
とはいえ、現時点で体力がないからといって、酪農畜産の仕事が向いていないとは限りません。
牛を育てる仕事をしていると、自然と規則正しい生活を送るようになり、生活リズムが整ってきます。耕作と兼業している場合は、日常的にとれたての新鮮野菜を口にするようになり、健康状態も改善されるでしょう。
「動物と関わる仕事がしたい」「外でのびのびと働きたい」という気持ちさえあれば、体力は後からついてきます。
気候変動や経済状況などの外的要因によって収入が変動する
牛乳や牛肉などの生産物は、気候変動や経済状況などの外的要因により、価格が変動しやすい傾向にあります。大きな災害や社会情勢の変化があると収入が安定せず、不安を感じてしまうのはデメリットといえるでしょう。最近では、世界的な環境問題や資源不足の影響もあり、牛のエサ代や重機の燃料代が高騰しているのも事実です。
このような経済的な不安を解消するためには、酪農畜産以外のことも積極的に学んでいかなければなりません。
- 最新のテクノロジーを学び、作業の効率化を図る
- 不況でも黒字化している農場の経営の仕方を学ぶ
- 第6次産業について学び、利益率の高い商売をする
これまで培ってきた伝統を守るのも大事ですが、時代の流れに合わせて変化していかなければ取り残されてしまいます。
「AgriMemo」では、現場で役立つ酪農畜産の基礎知識から最新の農業トレンドまで幅広い知識を発信しています。
まずは、このサイトの記事を定期的に読むだけでも構いません。一緒に勉強して日本の農業を盛り上げていきましょう。
専門知識と技術の習得が求められる
酪農畜産の現場では、専門的な知識や技術が求められます。
- 牛の病気に関する知識
- 生産物の取り扱いルール
- 農業用重機の操作方法
- 害虫対策の仕方
- 飼料設計の考え方
- 農場経営に関する知識
これらの知識や技術は、学校では教えてもらえません。現場でしか学べないことも多いため、仕事をしながら一つひとつ学んでいく必要があります。
とはいえ、好奇心旺盛な人にとっては、これほど素敵な環境も珍しいのではないかと思います。地球温暖化をはじめとする環境問題の影響もあり、私たちが学べることは増え続けていく一方です。
幅広い分野を学びながら「どうしたら自分たちの農業経営に生かせるだろう?」と考えるのも、酪農畜産の仕事をする醍醐味の1つです。
まとめ
牛を飼っている農家さんの1日は、早起きからはじまります。朝と夕方の2回に分けて「エサやり・哺乳・搾乳・清掃」などの仕事を行います。昼には牛舎を離れて畑仕事をしたり牧草を刈り込んだり、季節によって作業内容はさまざまです。
酪農畜産の仕事をしていると大変なこともありますが、それ以上に大きな喜びを得られる場面もたくさんあります。仕事への情熱や好奇心がある人にとっては、やりがいのある仕事といえるでしょう。