牛の寿命って何年?牛の寿命に影響を与える3つの要因について解説します

  • 2023年4月7日
  • 2023年5月5日
  • 農業
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牛の寿命と、それに影響を与える3つの要因について紹介します。産業動物の獣医師はもちろんのこと、牛を飼育している方々にも知っておいてほしい基礎知識です。

牛は人間の生活と密接に関わる家畜の1つであり、牛乳・牛肉・牛革など、古くからさまざまな生産目的で飼育されてきました。しかし牛の寿命については、あまり知られていないのが現状です。

そこで今回は、牛の寿命に関する基本的な情報について分かりやすくまとめてみました。最後には他の家畜の寿命との比較も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

牛の寿命って何年?

牛の寿命は、人間の飼養管理下におかれている場合と、自然環境下で生きている場合とで大きく異なります。それぞれの環境における牛の寿命は次の通りです。

飼養管理下での牛の寿命

飼養管理下での牛の寿命

飼養管理下での牛の寿命は、乳牛で5〜7年、肉牛で1〜3年くらいになります。なぜ、乳牛と肉牛で寿命に差が出るのかというと、それぞれの生産目的が異なるためです。

ホルスタイン種やジャージー種のような乳用牛は、産乳能力がピークを過ぎると経済的に不利になるため、5〜7歳を過ぎた段階で出荷される場合が多いです。黒毛和種や褐毛和種のような肉用牛は、肉質が良好な若い段階で出荷されるため、1〜3歳で出荷されます。

ただし、遺伝的に優良で繁殖を目的として飼育されている牛は、寿命が長くなる傾向にあります。繁殖目的で飼育されている場合は、10歳を超えても活躍する牛も少なくありません。

自然環境下での牛の寿命

自然環境下での牛の寿命

自然環境下での牛の寿命は、最大で20年程度になります。品種・環境・健康状態により差はあるものの、人間の管理下での寿命と比べると倍以上になるのは驚きですよね。

自然環境下では、外敵に襲われたり安定したエサの確保が難しかったり、他にもさまざまな問題がありますが、それらを乗り越えることができれば20歳近くまで生きられます。

最も長寿な牛の寿命は48年!

世界で最も長寿な牛は「ビッグ・ベス」という名のホルスタイン種で、48歳まで生きたと報告されています。ビッグ・ベスはアメリカ合衆国ミシガン州の農場で生まれ育ち、世界最長寿の牛としてギネス世界記録に認定されました。

これは、適切な飼育環境と健康管理によって、通常よりもはるかに長生きできることの一例になるでしょう。

牛の寿命に影響を与える3つの要因

牛の寿命を決定づける要因はたくさんありますが、特に重要なのは次の3つです。

  • 品種別の生産目的の違い
  • 飼育環境と健康状態
  • 遺伝子編集技術

それぞれのポイントを理解して最適化していくことで、牛の寿命を伸ばせるかもしれません。順番に解説していきます。

品種別の生産目的の違い

品種別の生産目的の違い

一口に牛といっても、世界には50種類以上の品種が存在します。牛は品種ごとに生産目的が異なるため、出荷のタイミングも品種によってさまざまです。

飼育環境と健康状態

飼育環境と健康状態

飼育環境や健康状態は、牛の寿命に大きく関係しています。快適な環境で飼育された牛はストレスが軽減され、健康状態も良好になることで、より長寿になる可能性があります。一方、狭いスペースや不衛生な環境で飼育された牛は病気や怪我のリスクが高く、寿命が短くなる場合が多いです。

遺伝子編集技術

遺伝子編集技術

近年、遺伝子編集や品種改良の進歩により、乳量の多い牛や肉質の良い牛が開発されています。しかし遺伝子改良により生産性が向上した一方で、寿命に悪影響を与えることもあります

たとえば、乳量が多い牛で繁殖能力や寿命が低下したり、産肉能力に優れた牛で難産や奇形が発生したり、遺伝子改良にも一長一短があることは意識しておかなければなりません。

今後は環境問題や動物福祉などの観点も踏まえた上で、生産性と寿命のバランスを取るような遺伝子改良が求められるでしょう。

牛以外の家畜の寿命

最後におまけとして、牛以外の家畜の寿命についても簡単に紹介しておきます。

家畜 寿命
馬の寿命は20〜30年。良好な飼育環境と適切なケアを行えば、30年以上生きることも珍しくない。世界最長寿の馬は、62歳で亡くなった「オールドビリー」という名前の馬。
豚の寿命は6か月から1年程度。寿命が短いのは、肉質が良いとされる若い段階で出荷されるため。繁殖用の豚の場合は、数年間飼育されることもある。家庭でペットとして飼われるミニブタの寿命は12〜15年ほど。
肉用鶏(ブロイラー)は生後約6週間で出荷される。卵用鶏(レイヤー)は生後1〜2年で産卵能力が低下すると出荷される。ペット・観賞用として飼われる鶏の寿命は5〜10年。
一般的な羊の寿命は10〜12年程度。ただし、肉用種・毛用種など生産目的によって寿命は異なる。肉用種の場合は1〜2年で出荷される。

家畜の種類によって寿命に違いはあるものの、食肉用として飼育されている家畜は非常に短命となっています。私たち人間は「本当はもっと長生きできたはずの命」をいただきながら生きているということは覚えておきたいですね。

まとめ

牛の寿命は、人間により管理されているか、自然のなかで生きているかによって大きく異なります。良好な自然環境で生活する牛は20年近くまで生きるものの、人間の管理下に置かれると乳牛で5〜7年、肉牛で1〜3年まで寿命が縮まります。

牛の寿命に影響を与える要因として重要なのは、品種別の生産目的・飼育環境や健康状態・遺伝子編集技術の3つです。今後は環境問題も考慮した飼育方法や、動物福祉にも配慮した遺伝子改良が求められるでしょう。