獣医師ってどんな仕事?仕事内容や種類、やりがいについて紹介

  • 2023年10月11日
  • 2023年10月21日
  • 農業
  • 369回

動物のお医者さんとして、ペットや産業動物の病気を治療する獣医師。しかし、実際には獣医師といっても働き方は多岐に渡り、どんな仕事があるのか知らない人も多くいます。

そこで今回は、獣医師の仕事内容や働き方の種類、仕事のやりがい、働くうえで大変なことについて解説します。「獣医師を目指している」「動物と関わる仕事がしたい」という方は、ぜひ参考にしてください。

獣医師ってどんな仕事?主な仕事内容を解説

獣医師の仕事内容

獣医師の仕事内容は、主に次の5つです。

  • 動物の診察や治療
  • 予防接種
  • 人工授精
  • 公衆衛生の向上
  • 研究活動

それぞれの仕事内容について説明します。

動物の診察や治療

獣医師の主な仕事内容は、動物を診察して健康管理をサポートしたり、ケガや病気を治療したりすることです。

実際の臨床現場では、動物への視診・触診・聴診や、飼い主への問診などを行います。必要であれば、血液検査・尿検査・糞便検査などの臨床検査を行うシーンも少なくありません。

診察・検査から得られた情報をもとに、動物の状態を正確に理解して、適切な治療を行います。実際の臨床現場では、薬の投薬治療がほとんどですが、必要であれば手術を行うときもあります。

本から学べる知識だけでなく、「手先の器用さ」「正確な技術力」などが求められるのも獣医師という職業の特徴といえるでしょう。

動物病院に勤務している場合は、夜間の急患対応も重要な仕事内容です。

急患の状態はさまざまであり、迅速かつ的確な治療が求められる場合も珍しくありません。現場で得られる数少ない情報から正確に状況を把握できる頭の回転の速さが必要な仕事です。

予防接種

予防接種による感染症拡大の防止も、獣医師の仕事内容の1つです。獣医学領域で使われる予防接種には、次のような種類があります。

獣医学領域の予防接種
予防接種の種類 概要
コアワクチン 動物の生活環境に関わらず、すべての個体に接種するべきとされるワクチン
ノンコアワクチン 動物の生活環境による感染リスクに応じて接種するべきとされるワクチン
生ワクチン 病原性を低下させた(生きている)細菌やウイルスなどを接種するワクチン
不活化ワクチン 病原性を失った(生きていない)細菌やウイルスなどを接種するワクチン
混合ワクチン 複数のワクチン成分が1つの薬液に入っているワクチン

適切な時期に、適切な予防接種をすることで、動物の免疫力を高められます。

感染症の拡大防止にもつながる重要な仕事です。

人工授精

人工授精による繁殖管理も、獣医師の仕事の1つです。

人工授精とは、雄から採取した精液を人工的に雌の生殖器官内に注入する技術で、動物の繁殖管理をするうえで非常に重要な仕事です。

犬や猫でも人工授精は行われますが、牛や豚など産業動物の世界でより重要な仕事内容といえるでしょう。

人工授精の成功確率(受胎率)を高めるためには、手先の器用さ、動物の繁殖生理への理解が求められます。

公衆衛生の向上

獣医師の仕事のなかには、公衆衛生の向上に貢献できる仕事内容もあります。

  • 人獣共通感染症の制御
  • 食品の安全性の確保
  • 環境問題解決に向けた取り組み
  • 野生動物の保護

人と動物の調和を目指し、適切なバランスを維持するよう働きかけるのが獣医師の役割です。

研究活動

獣医師のなかには、研究者として働く人も少なくありません。研究内容は多岐に渡り、未知の世界に挑戦できるやりがいのある仕事です。

  • 獣医生理学
  • 獣医薬理学
  • 獣医病理学
  • 獣医微生物学
  • 人獣共通感染症学
  • 獣医伝染病学
  • 獣医衛生学
  • 獣医公衆衛生学
  • 獣医臨床繁殖学
  • 獣医放射線学

研究内容は大学によってさまざまです。どんな研究をしているのか、大学進学前に調べておくと良いでしょう。

獣医師の種類

獣医師の種類

獣医師には、以下の5種類があります。

  • 小動物臨床獣医師
  • 産業動物臨床獣医師
  • 国家公務員
  • 地方公務員
  • 研究職

5種類の働き方について紹介します。

小動物臨床獣医師

小動物臨床獣医師とは、犬や猫などのペット診療を行う獣医師です。

ペットの健康管理や病気の診断・治療、ペットの飼い方に関する指導などを行います。

飼い主とペットの信頼関係を築き、ペットの健康をサポートする役割を果たします。

産業動物臨床獣医師

産業動物臨床獣医師とは、牛や馬などの大動物を診療対象とした獣医師です。

牧場での獣医業務を担当し、産業動物の健康維持をサポートする仕事です。

病気の治療をはじめとして、疾病予防・繁殖管理・飼料設計・生産性向上など、幅広い知識が求められます。

国家公務員

獣医師のなかには、国家公務員として働く人もいます。

  • 食品の安全性確保
  • 酪農畜産の生産振興
  • 動物検疫
  • 動物医薬品検査

国家公務員獣医師は、日本国内の食品・農業・動物など幅広い分野において活躍できる仕事です。責任が大きい分、大変なこともありますが、やりがいのある仕事といえるでしょう。

地方公務員

地方公務員獣医師は、主に豚や鶏などの家畜の管理を仕事とする獣医師です。

家畜の健康管理、病気の診断・治療、飼育環境や飼料の管理などが主な業務内容です。

農業生産における重要な役割を果たし、人々への食料供給に貢献できる仕事といえます。

研究職

動物に関するさまざまな実験・研究を行うのが、研究職の獣医師です。

新たな治療法の検討、ワクチン開発、研究データの分析など、所属する研究室によって業務内容はさまざまです。

自分の興味関心を突き詰められる、人や動物の医学の進歩に貢献できるなど、やりがいのある仕事といえるでしょう。

獣医師の仕事のやりがいとは?

獣医師の仕事のやりがい

獣医師の仕事では、やりがいを感じるシーンも少なくありません。

  • ケガや病気で苦しむ動物を助けること
  • 飼い主から感謝の言葉をもらえること
  • 専門知識や経験を活かして社会貢献できること
  • 実力がつけば独立・開業もできること
  • 安定した働き方も可能なこと

一つひとつのやりがいについて解説します。

ケガや病気で苦しむ動物を助けること

臨床現場で働く獣医師にとって、ケガや病気で苦しむ動物を助けられるのは最も大きなやりがいの1つです。

治療後の動物が元気に走り回る姿を見た時の喜びは、他では味わえないやりがいを感じさせてくれるでしょう。

動物の命を助けるという使命感や責任感は獣医師の仕事の根幹であり、このやりがいを追及して生涯現役で働きたいと願う人も少なくありません。

飼い主から感謝の言葉をもらえること

動物の病気が治って元気になると、飼い主から感謝の言葉をもらえる場面も多くあります。飼っている動物に対して、家族同然のように接する飼い主も多く、彼ら彼女らにとって人間と動物の境界線はありません。

動物のお医者さんである獣医師ですが、実際の現場では人と関わる機会も多いです。多くの人々との出会いがあるのも、獣医師として働くうえでのやりがいといえるでしょう。

専門知識や経験を活かして社会貢献できること

獣医師は、豊富な専門知識と経験を活かして社会貢献できる仕事です。

人と動物の間をつなぐ役割を持つ獣医師は、一般の人々が持っていない専門知識や実践経験を持っています。

働きはじめてからも常に学びの連続で、ほどよい刺激を感じながら生活できるのも獣医師ならではのやりがいでしょう。

実力がつけば独立・開業もできること

臨床の道に進んだ獣医師のなかには、一定の修行期間を経てから独立・開業する人も少なくありません。

自分が中心となって動物病院を経営することに、大きな喜びを感じる人も多くいます。

確かなスキルと信頼関係を得ることが大前提ですが、獣医師は他の職業と比べて独立・開業しやすい職業といえるでしょう。

安定した働き方も可能なこと

安定志向の人にとっても、獣医師という仕事はおすすめです。一口に獣医師といっても活躍の場は多岐に渡ります。

  • 動物病院
  • NOSAI
  • 官公庁
  • 製薬会社
  • 教育機関

1つの仕事を突き詰めるも良し、複数の働き方を経験して自分に合う仕事を探すもよし。獣医師不足で悩む会社も多いので、獣医師免許があれば働き口には困らないでしょう。

獣医師の仕事で大変なことは?

獣医師の仕事で大変なこと

獣医師はやりがいの多い職業ですが、ときには大変なこともあります。

  • 言葉が通じない動物の状態を理解する必要がある
  • 動物に触れる際にケガをする可能性がある

獣医師という職業ならではの大変なことを解説します。

言葉が通じない動物の状態を理解する必要がある

獣医師は、言葉が通じない動物を相手にする職業です。

動物は「ここが痛い」「いつから調子が悪い」など喋ることができないため、言葉によるコミュニケーションがとれません。

会話できない動物の状態を理解するには、その動物に関する基礎知識や繊細な観察力が必要です。

動物に触れる際にケガをする可能性がある

獣医師は動物と触れ合う機会が多く、他の職業と比較すると、ケガをするリスクが高い仕事です。大きなケガをするのは稀ですが、動物の予期せぬ行動により小さなケガをするのは、日常茶飯事といえるかもしれません。

動物は警戒心が強く、見ず知らずの人間に触れられるのを極点に恐れています。動物に触れる際は「優しく声をかける」「死角から触らない」など、動物を驚かせないことが重要です。

まとめ:獣医師の仕事はやりがいを感じるシーンが多い

まとめ:獣医師の仕事はやりがいを感じるシーンが多い

獣医師の仕事内容は、動物の診療や公衆衛生の向上、研究活動など多岐に渡ります。臨床現場で動物の病気を治す、公務員として人々の生活を守る、研究者として人や動物の医学に貢献するなど、働き方もさまざまです。

獣医師免許を取得した後の進路は人によって異なりますが、どの仕事もやりがいを感じられる素晴らしいものばかり。人と動物をつなぐ重要な役割を持つ獣医師として、自分なりの働きがいを探してみましょう。

なお、獣医師になるには高い基礎学力が必要です。「何を頑張るべきか分からない」「入りやすい大学が知りたい」という方は、以下の2記事も合わせてご覧ください。