牛の健康を維持するためには、体重や体脂肪を一定の範囲内で推移させることが重要です。しかし牛用の体重計を用意するのは、一般的な農家さんにとっては現実的な選択肢とはいえないでしょう。
そこで重要になるのがボディコンディションスコアという指標です。ボディコンディションスコアの考え方を理解すると、視覚と触覚だけで牛の太り具合を簡単に評価できるようになります。
牛の「痩せすぎ」「太りすぎ」を見極めるには?
牛の太り具合を評価するときは、ボディコンディションスコアという指標を使います。測定には多少の慣れも必要ですが、誰でも簡単に牛の栄養状態を評価できるようになるため、覚えておいて損はないでしょう。
ボディコンディションスコアとは?
ボディコンディションスコア(body condition score:BCS)とは、体脂肪の蓄積程度を言語化・数値化したものです。主に牛の栄養状態の評価に使われる指標です。
牛の見た目や触感は、体脂肪の蓄積程度によって変化します。適正な体脂肪の蓄積は、乳生産や健康維持と密接な関連性があり、BCSの評価は牛群の栄養管理を考える上で欠かせない指標といえます。
BCSの評価に専門的な知識は必要ありません。視覚と触覚を使うことで、誰でも簡単に牛のエネルギー状態を評価できるのが特徴です。
ボディコンディションスコアの評価方法
BCSを評価する際は、次の6か所に注目します。
- 腰角
- 股関節
- 坐骨
- 仙腸(腰角)靭帯
- 仙座(尾根)靭帯
- 腰椎横突起
1.00から5.00までの数値を0.25単位で区切って評価するのが一般的です。
BCSが1.00に近づくほど削痩(痩せている)状態、5.00に近づくほど肥満(太っている)状態になります。
BCSの評価方法を5ステップで解説します。
手順1:腰部
牛を起立させ、斜め後ろ45度の位置から腰部を観察します。
腰角・股関節・坐骨を結ぶ仮想曲線がV字型かU字型かを見極めましょう。
- V字型の場合はBCS3.00以下
→手順2:腰角と坐骨の観察へ - U字型の場合はBCS3.25以上
→手順4:仙腸靭帯と仙座靭帯の観察へ
手順2:腰角と坐骨
腰角と坐骨は、太って脂肪が付着すると丸くなり、痩せて脂肪がなくなると角張ってきます。
- 共に脂肪が付着している場合はBCS3.00
- 一方に脂肪が付着し、他方にない場合はBCS2.75
- 共に脂肪が付着していない場合はBCS2.50以下
→手順3:腰椎横突起の観察へ
手順3:腰椎横突起
腰椎横突起の観察では、横突起間溝に注目します。牛が太ると溝は埋もれて見えなくなり、痩せると溝は明瞭になります。
横突起の先端から腰椎の中心までの長さに対する溝の割合を観察してみましょう。
- 1/4が見える場合はBCS2.50
- 1/3が見える場合はBCS2.25
- 1/2が見える場合はBCS2.00
- 背骨(脊椎の棘突起)が鋸歯状に見える場合はBCS2.00未満(痩せすぎ)
手順4:仙腸靭帯と仙座靭帯
十字部の仙腸靭帯と尻尾の付け根の仙座靭帯は、牛が痩せるほど明瞭に、太るほど不明瞭になります。
- 共に明瞭に見える場合はBCS3.25
- 一方が明瞭で、他方がわずかに見える場合はBCS3.50
- 一方がわずかに見え、他方が見えない場合はBCS3.75
- 共に見えない場合はBCS4.00以上
→手順5:腰椎横突起先端の観察へ
手順5:腰椎横突起先端
- 横突起先端が見える場合はBCS4.00
- 横突起先端が見えない場合はBCS4.25以上(太りすぎ)
ボディコンディションスコアの活用方法
BCSの評価で大切なのは、時間軸に沿った経時的な変化に注目することです。評価した時点で痩せているか太っているかは、それほど重要ではありません。
乾乳期または分娩を基点とするグラフを作成して、時間が経つにつれてBCSがどのように変化していくのか観察してみましょう。牛群全体を評価してグラフを作ると、飼養管理の課題や改善すべきポイントが見えてきます。
ボディコンディションスコアの変化
BCSの変化と目標値は次のようになります。
- 分娩後10週で最低値となる(分娩前よりマイナス1.00前後)
- 分娩後10週以降は増加に転じる
- 増加に転じてから5〜6か月でBCS1単位増加させることが目標
BCS1単位≒体重×8%(約50〜60kg)
つまり、分娩後10週以降は「3日で1kgの体重増加」が必要
3日ごとに体重を1kg増やすというのは簡単なことではありません。この目標値を達成するためには、エサの量や組成の適切な管理が必要です。
ボディコンディションスコアと発病率の関係
BCSは周産期疾病と密接に関係しています。疾病を防ぐためには、BCSを適切な範囲で推移させることが重要です。
- 乾乳期はBCS3.25〜3.50
- 泌乳最盛期はBCS2.50以上
- 泌乳最盛期<泌乳中期<泌乳後期とBCSは徐々に増加
(参考記事:泌乳期・乾乳期っていつのこと?泌乳ステージごとのエサの管理についても紹介)
乾乳期のBCS減少は、分娩後の事故につながりやすいため避けなければなりません。しかし太りすぎると分娩後の食欲不振に陥りやすく、ケトーシスから第四胃変位へと移行してしまいます。
ケトーシス:過剰な体脂肪動員により血中のケトン体が増加して、食欲不振や神経症状を引き起こす。
脂肪肝:過剰な体脂肪動員により肝臓に体脂肪が蓄積するため、肝機能低下による食欲不振を引き起こす。
第四胃変位:第四胃にガスがたまって変位する疾病で、ケトーシスと併発しやすい。
分娩前後のBCSの変動が大きいほど発病率が高くなるというデータもあります。具体的には、分娩前後でBCSが0.50以上変動すると発病率が高まるため、注意しなければなりません。
分娩前後のBCSの変動幅を小さくするためには、次のような施策が考えられます。
- 高品質な粗飼料を給与して、乾乳期の過肥を防ぐ
- 高泌乳牛には、高栄養かつ嗜好性の高いエサを与える
- エサを与えたあとはしっかり観察して隣の牛からの盗食を防ぐ
牛群全体のエネルギー状態を評価することで、周産期疾病の減少につながります。
まとめ
BCSは、最も低コストな栄養状態評価の手法です。正確に測定するためにはある程度の慣れも必要ですが、時間や労力をかけずに牛の栄養状態を評価できるため、覚えておいて損はありません。
牛群全体のBCSの推移を見極めることで、飼養管理の課題や改善点が見えてきます。周産期疾病の予防にもつながるため、農場の経営効率を高めるという意味でも大きな役割を果たしてくれるでしょう。