環境アセスメントの手順と国内外の環境アセスメント制度の比較

環境アセスメントのプロセス

環境アセスメントのプロセス

環境アセスメントの手順

環境アセスメントの手順は以下の通りです。

環境アセスメント手順
手順 事業者の実施事項
計画段階の環境配慮 配慮事項の検討結果(配慮書)
対象事業の係る計画策定
対象事業の決定 事業概要の届出
※第2種事業のみ実施
環境アセスメント方法の決定 アセスの項目・方法の案(方法書)
アセス項目・方法の決定
環境アセスメントの実施 調査・予測・評価
環境アセスメントの結果について意見を聴く手続 アセス結果の案(準備書)
アセス結果の修正(評価書)
アセス結果の確定(補正後の評価書)
環境アセスメントの結果の事業への反映 事業の実施
環境保全措置の実施
事後調査の実施
環境保全措置等の結果の報告・公表 報告書の作成
報告書の公表

(参考:環境省「環境アセスメント制度のあらまし」)

第1種事業者は、事業規模や環境配慮などを検討し、その結果を配慮書にまとめます。
第2種事業者は、計画段階の環境配慮は任意で実施可能です。

環境への影響を調査・予測・評価した後は、事業者はこれらの結果を準備書に記載して、関連機関に提出します。

準備書に対する意見を受けた後、事業者は内容の見直しを行い、「環境影響評価書」を作成します。

事業者は、事業・環境保全措置・事後調査を実施した後で、その結果に基づく環境保全対策をまとめた報告書を作成。
これを公表して、環境アセスメントの一連の流れが完了します。

対象事業の選定と評価

対象事業の選定では、事業規模や環境への影響の程度に応じて、第1種事業と第2種事業に分類されます。
環境アセスメントの対象事業は以下の通りです。

対象事業一覧
第1種事業
※環境アセスメントを必ず行う事業
第2種事業
※必要性を個別に判断する事業
1 道路
高速自動車国道 すべて
首都高速道路など 4車線以上のもの
一般国道 4車線以上・10km以上 4車線以上・7.5km以上 10km未満
林道 幅員6.5m以上・20km以上 幅員6.5m以上・15km以上 20km未満
2 河川
ダム、堰 堪水面積100ha以上 堪水面積75ha以上 100ha未満
放水路、湖沼開発 土地改変面積100ha以上 土地改変面積75ha以上 100ha未満
3 鉄道
新幹線鉄道 すべて
鉄道、軌道 長さ10km以上 長さ7.5km以上 10km未満
4 飛行場 滑走路長2,500m以上 滑走路長1,876m以上 2,500m未満
5 発電所
水力発電所 出力3万kW以上 出力2.25万kW以上 3万kW未満
火力発電所 出力15万kW以上 出力11.25万kW以上 15万kW未満
地熱発電所 出力1万kW以上 出力7,500kW以上 1万kW未満
原子力発電所 すべて
太陽電池発電所 出力4万kW以上 出力3万kW以上 4万kW未満
風力発電所 出力5万kW以上 出力3.75万kW以上 5万kW未満
6 廃棄物最終処分場 面積30ha以上 面積25ha以上 30ha未満
7 埋立て、干拓 面積50ha超 面積40ha以上 50ha以下
8 土地区画整理事業 面積100ha以上 面積75ha以上 100ha未満
9 新住宅市街地開発事業 面積100ha以上 面積75ha以上 100ha未満
10 工業団地造成事業 面積100ha以上 面積75ha以上 100ha未満
11 新都市基盤整備事業 面積100ha以上 面積75ha以上 100ha未満
12 流通業務団地造成事業 面積100ha以上 面積75ha以上 100ha未満
13 宅地の造成の事業(※1) 面積100ha以上 面積75ha以上 100ha未満
港湾計画(※2) 埋立・掘込み面積の合計300ha以上

(※1)「宅地」には、住宅地以外にも工場用地なども含まれる
(※2)港湾計画については、特例の手続きを実施することとなる

第1種事業は、環境アセスメントが必須です。
事業を行う際は、法律に基づいた手続きを踏まなければなりません。

第2種事業は任意とされていますが、環境への配慮が求められます。

環境影響の評価と報告

評価書には、事業の環境影響に関する詳細な分析結果が含まれます。
事業者は、この評価を基に事業の実施計画を最終的に決定し、必要に応じて環境保全措置を講じなければなりません。

環境アセスメントのプロセスは、事業が環境に与える影響を事前に把握して、適切な対策を講じるために重要です。
調査・予測・評価の3ステップを踏むことで、環境保全と社会経済活動のバランスを適切に維持できます。

環境アセスメント制度

環境アセスメント制度

日本における環境アセスメント制度

日本では、1997年に成立した環境影響評価法により、環境アセスメント制度が定義されています。
13種類の事業を環境アセスメントの対象としており、事業規模に応じて第1種事業(環境アセスメントが必須)と第2種事業(環境アセスメントの必要性は個別に判断)に分けられています。

環境影響評価法の目的は、事業に伴う環境影響を評価して、その結果を事業計画に反映させることで、環境保全を実現することです。
そのため、対象となる事業も、規模が大きく環境影響の程度が著しいものに限られています。

環境アセスメント制度の機能

環境アセスメント制度では、環境影響評価法に基づき、事業による環境への影響を「調査・予測・評価」することを義務付けています。
配慮書・方法書・準備書・評価書など、複数のステップを経て多くの有識者からの意見を反映させることで、環境への悪影響を最小限に抑えられるわけです。

公開性も重視されており、以下の3段階では、国民からの意見も反映されています。

国民からの意見の反映
段階 概要
計画段階の環境配慮 配慮書(配慮事項の検討結果)に対する意見を集めます
環境アセスメント方法の決定 方法書(アセス項目・方法の案)の公表後、1ヶ月半の間は、誰でも意見を出すことができます
環境アセスメントの結果について意見を聴く手続 準備書(アセス結果の案)の公表後、1ヶ月半の間は、誰でも意見を出すことができます

多くの人々から意見を集め、さまざまな角度から環境への影響を評価することで、最適な対策の実施が実現します。

現状の課題と改善策

環境アセスメント制度の課題としては、生態系全体の評価が困難、事業や地域の特性を考慮した評価の必要性、個々の事業に対する評価基準の明確化などが挙げられます。

日本の環境アセスメント制度における課題は以下の通りです。

  • 累積的影響の評価が不十分
  • 重大影響が懸念される事業への環境大臣権限の限定
  • 代償措置の不十分さ
  • 広域計画レベルでの戦略的アセスメントの欠如
  • 地域との合意形成が不十分
  • アセスメント図書の公開制限

これらの課題を解決するため、さまざまな団体が動いています。

例えば、野生生物との関係改善を目的とした「WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)」は、再生可能エネルギー普及に向けた環境影響評価法の見直しへの提言を行なっています。

WWFジャパンのように、法規制の更なる改善に向けて動く団体が増えることで、持続可能な開発の実現に近づけるでしょう。

国際的な環境アセスメント制度も見てみましょう。

環境問題への意識は世界各国で高まっており、さまざまな事例を知ることは、日本の環境アセスメント制度改善のためにも重要なポイントです。

世界の環境アセスメント制度
国名 概要
カナダ 政策・計画案に対する環境影響評価を行い、経済面での効果を重視する傾向にある
オランダ 環境管理法に基づき、国土計画や活動計画の策定に環境影響評価を義務付けており、十分な公開性と住民の参加が確立されている
イギリス 公式に定めた戦略的環境アセスメント(SEA:Strategic Environmental Assessment)の制度は存在しないものの、政策や開発計画の立案に環境配慮を行うための指針が発行されている

このように、日本だけでなく世界各国で環境問題への取り組みが浸透しつつあります。

近年のスタートアップの中には、環境に配慮した事業計画を打ち出す企業も少なくありません。

今後、事業者が多くの人々から支持を得るためには、環境への配慮は必須事項といえるでしょう。