牛の発情周期と外部徴候の変化について!授精適期の考え方も紹介!

  • 2023年4月26日
  • 2023年4月26日
  • 農業
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牛の繁殖管理をするうえで、発情周期への理解は欠かせません。どのようなサイクルで発情が訪れるのか理解しておくと、繁殖成績の向上につながります。

最近では遺伝的な改良が進んだことにより、牛の発情にも変化がみられるようになりました。発情の見逃しを防ぐためには、そういった背景も押さえておかなければなりません。

今回は、牛の発情周期と外部徴候の変化、牛の授精適期について紹介します。「牛の発情を見逃したくない」「発情周期がよく分からない」という人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

発情とは?

発情とは?

雌牛の発情とは、雄牛による交配を許容する状態です。体内のホルモンバランスに変化が生じ、交配に適した体の状態になります。

性成熟に達した雌牛では、妊娠が起こらない限り定期的に発情がみられるようになります。発情から次の発情までの長さは動物種により一定で、これを発情周期といいます。

【発情周期には2種類ある】
完全発情周期:発情周期中に、卵胞発育・排卵・黄体形成・黄体退行が周期的に繰り返される。牛・馬・豚・羊・山羊・犬・人など。
不完全発情周期:発情時に交配が行われないと排卵後に黄体期がみられない。マウス・ラット・ハムスターなど。

牛の発情周期は約21日で、1回あたりの発情持続時間は約15時間、発情開始から約28時間後に排卵するといわれています。

ただし発情周期や発情持続時間は、栄養状態や飼育環境による個体差も大きいため、個別に管理していくのが理想です。

牛の発情周期

牛の発情周期

牛の発情周期の長さは、経産牛で約21日(18〜24日)、未経産牛で約20日(17〜23日)といわれています。妊娠したり栄養不足になったりしない限りは、1年を通して周期的に発情を繰り返します。

発情周期の長さは、品種・栄養状態・季節・飼養環境の影響を受けて変動することも少なくありません。前回の発情からの日数だけを頼りにしていると、気付かぬうちに発情を見逃して周期が分からなくなってしまいます。

発情周期のなかでどのステージにいるかを見極めるためには、外部徴候の変化に注目するのがポイントです。

牛の発情周期における4つのステージ別に、どのような変化がみられるか解説します。

発情前期

【発情前期の外部徴候】

  • 外陰部が徐々にふっくらとしてくる
  • 膣粘液が少量みられることもある

発情の3〜5日前になると、子宮からのPGF2α分泌がはじまります。PGF2αの影響で黄体は退行し、プロジェステロン濃度も低下していきます。プロジェステロンの減少に伴い、LH分泌の頻度が増して、LHの基底値も増加します。エストロジェンは、排卵の1〜3日前にかけて上昇します。

発情期

【発情期の外部徴候】

  • 活動量が増加する
  • 頻繁に鳴き声をあげる
  • 外陰部が充血・腫脹する
  • 膣粘液が流出する
  • 他の牛の陰部を嗅ぐ
  • 他の牛の背中に顎を乗せる
  • 他の牛に乗駕する(マウンティング)
  • 他の牛に乗駕されても動かない(スタンディング)
  • 食欲や乳量が低下することもある

発情期には、エストロジェン濃度が急激に上昇し、GnRHの一過性分泌(GnRHサージ)が起こります。GnRHサージの影響を受けて生じるのが、FSHサージ・LHサージです。LHサージは発情開始から約6時間後にピークを迎え、排卵を誘起します。LHサージの持続時間は8〜10時間程度です。

発情期における外部徴候の強さは個体により大きく異なりますが、経産牛よりも未経産牛のほうが明瞭で分かりやすい傾向にあります。

牛の発情持続時間は約15時間とされていましたが、最近では発情持続時間が短くなっており約8時間とするのが一般的です。

発情持続時間は、牛の状態や飼養環境によっても変化します。同じ牛でも、泌乳量の多い時期は発情持続時間が短くなり、同時に複数の牛が発情していると発情持続時間は長くなるという報告もあります。

排卵するのは、発情がはじまってから約28時間後です。一般的には排卵する卵胞は1個ですが、約5%の確率で2個の卵胞が排卵するといわれています。

発情後期

【発情後期の外部徴候】

  • 外陰部の充血・腫脹が徐々になくなる
  • 膣粘液は減少して発情終了後4日後にはほぼなくなる
  • 発情後2〜3日には、膣からの出血がみられることも多い

排卵して1〜3日後は、エストロジェン・プロジェステロンはともに低い状態です。

黄体形成が進み、排卵後8〜10日になるとプロジェステロン濃度は最高値に達します。

発情休止期

【発情休止期の外部徴候】

  • 外陰部の充血・腫脹が消失する
  • 膣粘液はみられなくなる

排卵後約7日で黄体形成が完了します。形成された黄体は、8〜9日間にわたって機能的黄体として持続します。

牛が妊娠していなければ、発情後16〜18日で黄体退行がはじまります。

牛の授精適期について

牛の授精適期について

授精適期とは、雌牛に授精したときに良好な受胎率が期待できる時期のことです。牛の授精適期を考えるうえで重要なのが次の3つです。

  • 精子の受精能獲得に要する時間(6〜8時間以上)
  • 精子の受精能保有時間(約24時間)
  • 卵子の受精能保有時間(6〜10時間)

上記3つに加えて、雌牛の体内におけるホルモン動態なども考えると、発情開始から20時間以内に授精するのが理想的です。

しかし実際には発情開始時点を正確に把握することはできないため、外部徴候を頼りにして授精適期を見極めます。

実際の現場では、スタンディング発見から12時間以内に授精することを目標としています。

まとめ

牛の発情周期は約21日で、発情周期のどの段階にいるかによって、外部徴候に変化がみられます。雌牛の発情を見極めるためには、前回の発情からの日数をカウントするのも大事ですが、外部徴候から見極めるという視点も持っておくとより正確です。

牛の授精適期については、最初のスタンディング発見から12時間以内を目安にするのが一般的です。しっかりとポイントを押さえた繁殖管理をして、農場の生産性を高めていきましょう。