地球温暖化の原因として知られる温室効果ガス。子どもたちの未来のために、排出量を減らすための対策が世界中でおこなわれています。
日本でも2030年度までに46%削減(2013年度比)を目指しており、身近な問題として考える人も増えてきました。
今回は、温室効果ガスの特徴や代表的な7種類の比較、減らすためにできることについて紹介します。
「温室効果ガスの種類について詳しく知りたい」「個人や家庭でできる対策を探している」という人は、ぜひ最後までご覧ください。
温室効果ガスとは?
温室効果ガスとは、太陽からの熱を吸収して地表を温める働きをする気体です。地球の表面温度を一定に保つ役割を果たしており、人間が生きるうえで欠かせない存在となっています。
しかし近年、温室効果ガスの増加による地球温暖化が問題視されています。
地球温暖化が進むと、異常気象・海面上昇・生態系崩壊といったリスクもあるため、温室効果ガス削減に向けた取り組みが必要です。
温室効果ガスの割合
温室効果ガスには、二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・フロンガス類などの種類があります。それぞれが占める割合は次のとおりです。
温室効果ガスの種類 | 割合 |
---|---|
二酸化炭素 | 76.0% |
メタン | 16.0% |
一酸化二窒素 | 6.2% |
フロンガス類 | 2.0% |
主に化石燃料の燃焼により生じる二酸化炭素が大部分を占めています。
一酸化二窒素やフロンガス類の割合は低いものの、高い温室効果を持っているため減らしていかなければなりません。
温室効果ガスのメリット
温室効果ガスのメリットは、地球の表面温度を維持することです。
地表からは赤外線が放出されており、その多くは温室効果ガスによって吸収されます。吸収された赤外線は再び地表へと放出されて、地球の表面温度を維持するという仕組みです。
温室効果ガスの働きにより、地球の平均気温は約14度に保たれています。温室効果ガスがなくなると地球の表面温度はマイナス19度まで低下するため、多くの生物が死滅してしまいます。
温室効果ガスは人間をはじめとした生物が生きていくために、なくてはならない存在です。
温室効果ガスのデメリット
温室効果ガスの増加には、次のようなデメリットがあります。
- 異常気象
- 海水面の上昇
- 動植物の絶滅
- 食料危機
- 砂漠化
地球の平均気温が上昇して南極の氷が溶けた結果、海水面が上昇します。陸地面積が縮小して、行き場を失った多くの種が絶滅してしまうでしょう。
人間が食料としている動物や、家畜のエサとなる植物が減少すると、食料危機につながる恐れもあります。
気温上昇や気流変化により、異常気象も頻発します。大雨・台風といった自然災害が増えたり、世界各地で砂漠化が進行したり、大陸規模での問題が発生する可能性も否定できません。
温室効果ガス7種類の影響を比較
「地球温暖化対策の推進に関する法律」では、7種類の温室効果ガスが定義されています。
温室効果ガス | 地球温暖化係数 |
---|---|
二酸化炭素 | 1 |
メタン | 21 |
一酸化二窒素 | 310 |
ハイドロフルオロカーボン類 | 140〜11,700 |
パーフルオロカーボン類 | 6,500〜9,200 |
六フッ化硫黄 | 23,900 |
三フッ化窒素 | – |
(出典:環境省地球環境局「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン(試案 ver1.6)」)
地球温暖化係数とは、二酸化炭素を基準にして地球温暖化への影響を数値化したものです。
たとえば、メタンは二酸化炭素の21倍の温室効果があるため、1kgのメタン排出は21kgの二酸化炭素排出と同じくらい悪影響があることになります。
地球温暖化係数以外にも、温室効果ガスの種類によって環境への影響はさまざまです。それぞれの特徴を解説します。
二酸化炭素
二酸化炭素は、炭素原子1個と酸素原子2個が結びついた物質です。炭酸飲料やドライアイス、消火器など幅広い用途で活用されています。
二酸化炭素は、主に化石燃料の燃焼により発生します。大気中の割合は約0.04%とわずかですが、地球温暖化への影響が大きい温室効果ガスです。
メタン
メタンは、炭素原子1個と水素原子4個が結びついた物質です。天然ガスの主成分であり、家庭で使用する都市ガスや、化学製品の原料として使われています。
メタンの主な発生源は以下のとおりです。
- 家畜のゲップ
- 稲作
- 天然ガスの採掘
- 廃棄物の埋立場
二酸化炭素の21倍の温室効果を持っており、地球温暖化への影響が大きい物質の1つです。
一酸化二窒素
一酸化二窒素は、窒素酸化物のなかでも安定した物質で、大気中における寿命は109年といわれています。人体への悪影響はなく、食品添加物や吸入麻酔薬として利用されています。
一酸化二窒素の主な発生源は次のとおりです。
- 肥料
- 家畜の排泄物
- 化石燃料の燃焼
- 化学工場
直接的な害はないものの、二酸化炭素の310倍の温室効果を持っており、地球温暖化について考えるうえで重要な物質です。
ハイドロフルオロカーボン類
ハイドロフルオロカーボン類とは、代替フロンの一種です。オゾン層破壊の原因となるクロロフルオロカーボン(特定フロン)に代わる物質として、冷媒や洗浄剤に利用されています。
ハイドロフルオロカーボン類はオゾン層を破壊しないものの、二酸化炭素の数百から一万倍の温室効果を持つ物質です。冷蔵庫やクーラー、スプレーの噴射時などに発生します。
パーフルオロカーボン類
パーフルオロカーボン類とは、炭素とフッ素から構成される化学物質です。不燃性の安定した気体であり、主に半導体の製造時に利用されています。
オゾン層破壊効果がないことから、代替フロンの1つとして利用されてきましたが、地球温暖化への影響が大きいため京都議定書で排出削減対象として指定されています。
(参考:環境省「京都議定書目標達成計画」)
六フッ化硫黄
六フッ化硫黄とは、硫黄とフッ素で構成された気体です。安定性が高い不燃性の気体で、絶縁性能に優れています。
六フッ化硫黄は、ガス遮断器やガス絶縁開閉装置といった電気機器に広く利用されており、電力の安定供給には必要不可欠な物質です。
日本国内では、1960年代の急速な工業化により排出量が増加しました。
三フッ化窒素
三フッ化窒素は、窒素とフッ素で構成された毒性・助燃性のある気体です。主に精密機器のドライクリーニングに利用されています。
三フッ化窒素の地球温暖化係数は17,200と、他の温室効果ガスと比べて高い値となっています。
排出源は限定的であるものの、近年増加傾向にある物質です。
(参考:経済産業省「主な温室効果ガスの温暖化係数一覧」)
温室効果ガスを減らすためにできること
温室効果ガスを減らすためには、一人ひとりの小さな取り組みが大切です。個人や家庭でできる具体的な対策について紹介します。
個人でできる温室効果ガス対策
個人でできる温室効果ガス対策として、以下の3つから始めてみましょう。
エアコンの設定温度を見直す
冷房は28度、暖房は20度を目安にして、エアコンの設定温度を変更しましょう。特に夏場は、エアコンの設定温度を1度調節するだけで、大きな省エネ効果が期待できます。
服装を工夫して、エアコンに頼りすぎないライフスタイルを心がけることも大切です。
マイバッグを持参する
買い物をするときにマイバッグを持参すると、ゴミの量を減らせます。ゴミを燃やすと二酸化炭素が排出されるため、排出量を減らすためにはゴミを出さない取り組みが必要です。
マイバッグ持参によるレジ袋の削減以外にも、マイボトルやマイ箸など繰り返し使用できるアイテムを使うと、ゴミの排出量をさらに減らせるでしょう。
自動車の利用を控える
自動車の利用を控えるのも、温室効果ガス対策として有効です。
バスや電車などの公共交通機関を利用すると、一人あたりの温室効果ガス排出量削減につながります。
目的地までの距離が短いときは、徒歩や自転車で移動すると、健康面でのメリットも期待できます。
家庭でできる温室効果ガス対策
家庭でできる温室効果ガス対策は以下のとおりです。
廃棄食品を減らす
購入した食品は使い切り、食べ残しが出ないように心がけることが大切です。
食料を廃棄すると、生産・加工・梱包・輸送のために使った資源やエネルギーが無駄になるうえに、埋立地におけるメタンガス発生の原因にもなります。
買い物リスト作成、作り置きレシピ活用により、家庭内での廃棄食品を減らせるでしょう。
食べ残しが出たときは、家庭菜園やガーデニングの堆肥として活用すると、温室効果ガス削減につながります。
こまめな節電、節水を心がける
家族みんなで節電・節水に取り組むことで、温室効果ガスを削減できます。
- 不要な照明をこまめに消す
- テレビをつけっぱなしにしない
- カーテンを使って熱の出入りを防ぐ
- お風呂は続けて入る
- 洗濯の回数を減らす
- トイレの大小レバーを使い分ける
節電・節水を心がけると、環境だけでなく家計負担にもよい影響があります。
省エネ家電に切り替える
家庭で使用中の家電製品を省エネ家電に切り替えるのもおすすめです。省エネ家電の導入は、電気代の節約になるうえに、発電過程で発生する二酸化炭素の削減にもつながります。
家電のなかでも特に消費電力が大きいのが次の5つです。
- エアコンなどの空調機器
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- 照明器具
- テレビ
(出典:経済産業省資源エネルギー庁「省エネって何?」)
上記5つを省エネ製品に切り替えるだけでも、大きな節電効果が期待できます。
まとめ:温室効果ガスを減らすには身近な対策からはじめよう
温室効果ガスは、人間が生きるうえで欠かせない存在ですが、近年の急速な増加により地球温暖化が問題となっています。
地球温暖化が進行すると、食料危機や動植物の絶滅につながる恐れもあるため、削減のための取り組みが必要です。
節電・節水・ゴミ削減など、温室効果ガスを減らすためにできることはたくさんあります。身の回りの小さな対策から始めて、地球環境を守りましょう。