牛は月齢ごとに呼び方が変化する?月齢の目安や名前を変えるメリットを解説

  • 2023年4月2日
  • 2023年7月2日
  • 農業
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子牛・若牛・成牛と、牛は月齢によって呼び方が変わります。酪農畜産の現場で働くうえで、月齢による牛の呼び方の変化を理解しておくのは大事なことです。

今回は、月齢によって牛の呼び方がどのように変わるのか、なぜ名前を変える必要があるのかについて解説します。

酪農畜産の現場で関わる人たちと円滑なコミュニケーションを取るためにも、ぜひ参考にしてください。

牛の呼び方は月齢によって変化する

牛の呼び方は、月齢によって大きく3つに分けられます。

  • 6ヵ月齢未満:子牛
  • 6〜24ヵ月齢:若牛
  • 24ヵ月齢以降:成牛

牛の成長度合いには個体差があるため厳密な区別はないものの、おおよその目安となる月齢を覚えておくと便利です。

それぞれのステージにおける、さらに細かい呼び方の違いを解説します。

出生〜6ヵ月齢:子牛

子牛

酪農畜産の現場で「子牛」というときは、生まれてから約6ヵ月齢までの牛を指す場合が多いです。

子牛を意味する言葉として「犢(とく)」という言葉がありますが、現在では子牛と呼ぶのが一般的です。ただし雄の子牛は「牡犢(ぼとく)」と呼ばれることも多いため、覚えておくとよいでしょう。

離乳を境にして、子牛の呼び方は変化します。

出生〜離乳:哺乳子牛

生まれてから離乳するまでの子牛を「哺乳子牛」と呼びます

生後2ヵ月くらいまでの子牛は、消化器官が完全には発達しておらず、固形のエサをうまく消化できません。

親牛や人間が哺乳する時期であることから、哺乳子牛と呼ばれるようになりました。

離乳〜6ヵ月齢:幼牛、育成牛

離乳から約6ヵ月齢までの子牛は「幼牛」と呼ばれます。ただし、この呼び方は現場ではほとんど使われないため、頭の片隅に入れておくだけでOKです。

離乳してから種付けをするまでの牛は「育成牛」と呼ばれます。こちらの呼び方は頻繁に耳にするので、覚えておくとよいでしょう。

離乳した子牛は自分でエサを食べて育ち、生後14〜15ヵ月を目安に最初の種付け(人工授精)が行われます。離乳から種付けまでの間が「育成期」と呼ばれる期間です。

6〜24ヵ月齢:若牛

若牛

6〜24ヵ月齢の牛は「若牛」と呼ばれます

若牛は、妊娠しているかどうかによって呼び方が変わります。

6ヵ月齢〜種付け:育成牛

「育成牛」と呼ぶときは、生後6ヵ月から種付けをするまでの期間を指す場合がほとんどです。

育成期とは、牛にとっての青春時代のようなもの。温かい時期になると、近くの育成牧場に牛をあずける農家も少なくありません。

牛は8〜9ヵ月齢以降になると、発情兆候が発現しはじめます。これが「春機発動期」と呼ばれる時期です。

春機発動期から約3ヵ月で子宮や卵巣が十分に発達し、牛は妊娠可能な体になります。これが「性成熟」と呼ばれる現象です。

種付け〜初産:初妊牛、未経産牛

種付け後、初めて妊娠した牛を「初妊牛」と呼びます

分娩を経験していないという意味で「未経産牛」と呼ばれることも多いです。

24ヵ月齢以降:成牛

成牛

「成牛」と呼ぶときは、基本的には24ヵ月齢以降の牛を指す場合がほとんどです。

ただし、一口に成牛といっても、初産牛・経産牛・親牛・搾乳牛・乾乳牛などさまざまな呼び方があるため注意しなければなりません。

成牛の呼び方の変化について解説します。

初産〜2産目:初産牛

初めて出産を経験した牛は、初産牛と呼ばれます。一般的には、生後23〜25ヵ月齢で最初の出産を経験する牛が多いです。

成牛は、一度でも出産を経験すると牛乳を出すようになります。牛乳を絞れる状態にある牛は「泌乳牛」「搾乳牛」と呼ばれます。

搾乳開始10ヵ月後:乾乳牛

「乾乳牛」とは、搾乳を止めて次の分娩に向けて準備している牛のことです。

出産した親牛は、約10ヵ月にわたり生乳を生産し続けます。分娩後50〜110日前後に泌乳量はピークを迎え、その後は徐々に乳量が低下します。

搾乳を開始してから9〜10ヵ月後には、搾乳を止めて次の分娩に向けた準備期間に入ります。この準備段階が「乾乳期」と呼ばれる期間です。

  • 抗菌剤の残留による牛乳の廃棄をしなくて済む
  • 薬剤の選択肢が増えることで治療効果が高くなる

このような理由から、実際の現場では「乾乳期治療」が積極的に行われています。乾乳期は病気の牛を治療するのに都合のよい時期といえます。

2産目以降:経産牛

「経産牛」と呼ぶときは、2産以上している牛を指す場合が多いです。厳密には、1回でも分娩を経験した牛は経産牛になりますが、実際の現場では「初産後は初産牛、2産目以降は経産牛」と呼ぶことがほとんどです。

経産牛のなかでも、繁殖生理ステージによって、妊娠牛・搾乳牛・乾乳牛など呼び方が変わるので、混乱しないように注意しましょう。

1頭の牛は「分娩→泌乳→乾乳」のサイクルを4回ほど繰り返し、約5年でその役目を終えるケースが多いです。

月齢ごとに呼び分けるメリット

月齢ごとに呼び分けるメリット

牛の月齢によって呼び分けると、次のようなメリットがあります。

  • 生産管理がラクになる
  • 目の前の牛の状態を正しく把握できる
  • 農家と獣医師の間のコミュニケーションが円滑になる

酪農畜産の現場では、月齢によって呼び方を変えることで、牛をグループ化して管理しています。

飼養頭数の多い農家では「育成牛舎」「乾乳牛舎」のように、月齢・泌乳ステージごとに専用の牛舎を用意している場合も珍しくありません。

牛の成長段階に合わせた呼び方の変化は、酪農畜産の現場で働く人にとって重要な管理方法の1つです。

牛の呼び方に関するよくある質問

うし、ぎゅう、どっちが正しい?

飼育中は「うし」と呼び、肉になると「ぎゅう」と呼ぶのが世間では一般的です。

ただし酪農畜産の現場では、育成牛(いくせいぎゅう)、乾乳牛(かんにゅうぎゅう)など、飼育中でも「ぎゅう」という呼び方をしています。

「うし」という名前の由来は?

牛はかつて「鞭で打ちながら使う獣」を意味する「うしし」という名前で呼ばれており、これが縮まって「うし」になったと考えられています。

ただし牛の名前の由来には諸説あり、はっきりとした由来はわかっていません。

まとめ:牛の呼び方を理解しよう

牛の呼び方は、月齢によって3段階で変化します。「6ヵ月齢未満は子牛・24ヵ月齢以降は成牛・その間は若牛」と覚えておけば、基本的には問題ありません。

呼び方を聞いただけで、目の前にいる牛が何ヵ月齢くらいなのか理解できるようになると、現場でのコミュニケーションもスムーズになるでしょう。